ミスを個人の責任だけで終わらせず、組織の改善につなげる「ジャスト・カルチャー(Just Culture)」の考え方を紹介します。
仕事でミスをしたとき、あなたはどのように行動するでしょうか。
すぐに上司や周囲へ報告できる人もいれば、「叱られるのではないか」「評価が下がるのではないか」と考え、報告をためらってしまう人もいるでしょう。
私自身も、ミスをしたときには「できれば知られたくない」という気持ちが生まれることがあります。
だからこそ、ミスが分かったときにはできるだけ早く上長へ報告し、「報告・連絡・相談」を怠らないよう意識してきました。
それは単に自分を守るためではありません。
小さなミスであっても、報告が遅れることで問題が大きくなれば、組織や顧客、場合によっては社会からの信頼にも影響するからです。
しかし、ここで一つ疑問があります。
ミスをした人を叱責したり、評価を下げたりするだけで、本当に組織は良くなるのでしょうか。
そこで考えたいのが、「ジャスト・カルチャー(Just Culture)」という考え方です。
ジャスト・カルチャーは、日本語では「公正な文化」などと訳されます。
その基本的な考え方は、エラーやミスを起こした個人を一律に責めるのではなく、「人間はミスをする」という前提に立ち、その行為がどのような性質のものだったのかを見極め、適切に対応するというものです。
重要なのは、「ミスをしても何でも許される」という考え方ではないことです。
単純なヒューマンエラーと、危険性を認識しながら意図的に行った違反とを同じように扱わず、行動の性質に応じて責任のあり方を考えます。
ジャスト・カルチャーでは、人間の行動を大きく3つに分けて考えます。
悪意のない誤操作や見落としなど、誰にでも起こり得る「うっかりミス」です。
こうしたミスに対して個人を責めるだけでは、同じミスが再び起こる可能性があります。
そこで、マニュアルは分かりやすかったか、機材やシステムは間違えにくい設計だったか、業務手順に無理はなかったか、といった点を検証し、再発を防ぐ仕組みを考えます。
仕事への慣れなどからリスクを低く見積もり、本来必要な手順を省略してしまうような行動です。
この場合は、単純に処罰するのではなく、なぜその行動を選んだのかを確認し、再教育やリスク認識の改善につなげます。
危険性やルールを認識しているにもかかわらず、意図的に重大な違反を行うケースです。
このような行為については、ヒューマンエラーと同じように扱うことはできません。必要に応じて懲戒や処分など、組織として厳格な対応を取ることになります。
ミスをしたら必ず厳しく責められる。
そんな組織では、人は次第にミスを報告しなくなるかもしれません。
報告されなければ、組織は問題が起きていること自体を把握できません。そして、原因を分析する機会も、仕組みを改善する機会も失われてしまいます。
一方で、「正直に報告すれば何をしても許される」という組織も健全とはいえません。
必要なのは、人間が避けることのできないエラーと、リスクを軽視した行動、そして意図的な違反との間に、公正な線を引くことです。
ジャスト・カルチャーが目指しているのは、「責任を問わない文化」ではなく、責任を公正に考えながら、報告された失敗を組織の改善につなげる文化だと私は考えています。
業務改善を考えるうえで、「誰が間違えたのか」だけを追究しても、問題の本質が見えてこないことがあります。
なぜ、そのミスが起きたのか。
同じ状況なら、別の人でも同じミスをしなかったか。
手順、設備、情報共有、教育、業務量などに改善できる部分はなかったか。
こうした視点を持つことで、一つのミスを組織全体の改善につなげることができます。
人を責めることよりも、仕組みを改善すること。
ただし、意図的な違反については適切に責任を問うこと。
この二つを両立させることが、ジャスト・カルチャーの重要な考え方ではないでしょうか。
日本の企業や組織でも、このような考え方がさらに浸透すれば、職員が問題を報告しやすくなり、そこから組織自身が学び、改善していく文化を育てることができるのではないかと考えています。